Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
私が初めて母上に連れられて日本へと渡ったのは、やっと物心がついた3つのころだった。
その時は父上がかつてないほど体調がよく、精神的な余裕が生まれたからだろう。成婚以来初めて母上の里帰りを許したのだ。
とはいえ1週間という慌ただしい里帰りであったから、母上もゆっくりとはできなかったのだろう。
両親や家族や親族は言うに及ばず、かつての学友や親友や恩師など。お会いしたい方はたくさんいるのに、ヴァルヌス王国王子妃という立場もある。そのご公務の合間に会いに行かれても、昔を懐かしむ間もなくすぐ別れねばならない。
母上を心配した私も国王の王孫であり、当時は王位継承権第2位。
わずかながらも王族の自覚はあったから、他の子どもに混じって遊ぶような真似はできなくて。無邪気に振る舞う子ども達を羨ましく感じても、寂しくともとにかく我慢をしていた。