Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
(よし、うまくできた)
目の前にある完成したレアチーズケーキは、我ながら上出来だと思う。
桂木の別荘に招待された桃花がこれを大好きだと知ってから、試行錯誤を重ねてオリジナルのレシピを作り上げた。今日は彼女の誕生日だから、そのケーキを出すには最高の条件。
(さりげなく誕生日おめでとう……と言うか。それとも、クリスマスに託つけるか。藤沢は桃花の誕生日を知ってるはずだから、彼女がそれを話題にするよう誘導するか)
誕生日プレゼントとしてはかなりささやかであるけれど、あまり親しくない同僚(というか後輩)から贈り物をされても困るだろう。桃花の中で私は確実にそれだけの位置づけだろうから。
(だけど、これをきっかけに話をして……2人きりになれるチャンスを作ろう)
せっかく桂木がお膳立てをしてくれたのだから、と頬を軽く叩いて気合いを入れる。今日こそ桃花と向き合えるという緊張から、強張った表情を和らげた。
(よし! 行くぞ)
気負ってキッチンからリビングにケーキを持って行ったが……。
「レアチーズケーキ~美味しいろ!」
「ほんとですね~あははは! ウケるぅ」
いつの間にかワインを飲んで酔っぱらいと化した桃花に泣く羽目になった。