Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



「せいぜい今のうちに好きに言ってな。その代わり、今度何かをしたら容赦しないってこと憶えてなよ」


誰に、とははっきり言わないでおく。

あからさまに桃花だけを擁護したら、この女はまた逆恨みしかねない。全て自分基準によって行動するから、世間一般の常識だの理屈だのは関係ない。桃花を贔屓したと解れば、直ぐ様その毒が全て桃花に向かうだろう。

桃花をこれ以上苦しませるものか。そんな決意で冷笑と冷たい言葉を浴びせれば、大谷(女)はフンと鼻を鳴らす。


「そっちこそ、後からみっともなく吠え面かくんじゃないわよ」

「そのままそっくりお返ししますよ、大谷フロア長夫人サマ」


嫌味に嫌味で返してやると、顎を上げた女が肩を怒らせながらカウンターに戻っていったが。こちらを見る目に不穏な色が窺えたから、絶対に何かを仕掛けてくると簡単に予測できる。


すぐそばの内線で事務所に連絡すると、桂木を呼び出して事のあらましをザッと説明しておいた。


『そうだな。今までのパターンから言えば、イタズラにできないレベルのものを仕掛けてくる可能性が高い。僕も注意をしてみるけど、雅幸。君も彼女を監視しておいて欲しい』


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