Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



そして、程なく桂木から連絡があった。


【事務所の人に話を聞いたら、どうやら数日前貴重品倉庫の鍵が行方不明になったらしい。翌日見つかったとのことだったが、届け出をしたのは賀藤という警備担当者だ】


名前を聞いてすぐに思ったのは、賀藤は大谷シンパのうちの一人だったということ。警備すら抱き込むあざとさは桂木も承知しているだろう。連中が結託し、今までどれだけ店に被害を与えてきたか。


個人的な感情――好き嫌いや合う合わないという程度で、気に入らないと従業員をいびり追い出した事例は数知れず。オレと同期で同じここに配属された、紳士服担当の女子社員も入社半年で辞めさせたし。パートやアルバイトなんて言わずもがな。ベテランのパートすら何人も辞めさせた。

接客すべき客すら自ら選別し、あからさまに違う態度やサービスを取る。そのためどれだけの販売の機会を逃した上、苦情が本社に寄せられたか。

そして、最大の功罪。


――レジ金の横領と、商品の盗難。更にそれの犯人を他人に仕立て、罪を被せようとしている。


いや、最も許せない罪は――桃花に対する仕打ち。彼女の人生を狂わせたことだ。


(……絶対に尻尾を掴んでやる)


貴重品倉庫の鍵を手にしたということは、間違いなくそれを利用してくる。盗難やそれから監禁という手段を使うだろう。古典的な手段だが、今は12月も終わり。閉店後暖房が切れたバックヤードがどれだけ冷えるか。そんな場所に一晩監禁されれば確実に体調を崩すだろうし、精神も参るだろう。


(絶対に……守る)


ギュッと震えるほど拳を握りしめた。



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