Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
その後、桂木から内線で大谷の新たなイビりを知った。小学生の女の子の買い物を断るように仕向けさせた、ということだったが。それは行き過ぎと思うと同時に、桃花には毅然と立ち向かう勇気を持って欲しかったと思う。
(大谷が毒なのは解るが、社員なのだからきっぱりと切り返すことも必要だったのでは?)
ボキャブラリーの貧困な大谷だから、大方夫に告げ口してクビにするとちらつかせたんだろう。だが、フロア長程度の権限で正社員一人をどうこうできるはずはない。その辺りは冷静に考えれば解るが、おそらく桃花は麻痺して思考が止まってしまっている。 それだけで大谷夫婦が桃花に与えてきたストレスがどれほど大きかったということか判る。改めて頭にきた。
在庫チェックはとうに終わったが、大谷シンパの一人が怪しい動きをしているから、ここから動く訳にはいかない。桃花も雑貨のチェックの為に入ってくるから、その時に備えて身を潜める選択をしておいた。 大谷シンパどもに、俺がここに居ることを知られない方がいい。
(しまった。携帯電話を持ってくればよかったか)
外部との連絡用に持ち込めばよかったが、基本的に私物の携帯電話は持ち込み禁止になっている。だから、仕方ない部分もあるがもうちょい計画的に動けばよかったかもしれない。
そう考えながらだいぶ長い時間待ち続けた後に、桃花が倉庫に入ってきた。