Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
けれどやっぱり子どもとしては、ジッとしてばかりではいられなくて。外に出て遊びたい気持ちがむくむくと頭をもたげてくる。
乳母(ナニィ)や侍従だとやはり「王族らしく行儀よくなさいませ」なんてしつけてこようとするから。最初は異国に来た物珍しさから、大人しくあちこちを見てたけれど。次第に飽きて、体を動かしたくてたまらなくなる。
3つの子どもなんて好き放題生きるのが仕事だから、私だとて例外ではない。明後日にはヴァルヌスに帰国するという日の夜、私は母に願い出た。
“お母様と一緒に行きたいのだ”――と。
その時、母上がこの提案にどう感じたのかは解らない。
けれど、母上はにっこり笑って朗らかに賛成してくださった。
“カイがそう言うのを待っていたの。明日は旧友のお家を訪ねるから、あなたも一緒に行きましょうね。綺麗な温室があるのよ”
母上がさりげなく花の話題を出したのは、当時の私が引っ込み思案なことを危惧して出されたんだろう。
確かに、私は同年代の子どもと接するのは苦手だった。外に出てもよくひとり遊びをして、虫を追いかけ草花を愛でる。どこかひとりを好む性格であったから。
誰かと遊ぶよりも、小さなスケッチブックに好きに色を乗せたり、泥をいじって形を作るのも好きだった。絵本を読み空想するのも日常茶飯事で。ボーッと空を眺めるのが楽しかった。