Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編




病院の帰りに東京にあるヴァルヌスの大使館に寄ってきたら、結局外泊になってしまった。
桃花の体調は気掛かりだが、桂木からはもう普通に家事をしていると連絡があって。一晩なら大丈夫だろう、と踏んだ。ヴァルヌスへの帰国に伴う打ち合わせや話し合いや確認は重要だ。

(出来たら桃花も一緒に)とは考えたが、気持ちすら伝えてないのにそれは不可能な話。ひとまず、葛城の創立記念パーティで全てを打ち明けよう。話はそれからだ。


「……カイ殿下、帰国はお一人でなさってください」


マンションへ帰る為に東名高速を走っている車中で、オレの思考を読んだように幼なじみの侍従長が言うが、それに対しての答えなど決まってる。

「自分の将来は、自分で決める。お膳立てしてもらわずともいい。おまえが保守派なのは知ってるが、今は新しい価値観を必要とする時代だ。いつまでも旧来のしきたりや伝統にしがみつくな」


そうして諭した後に、自分のすることは全ての影響を考えてから実行している、と伝えておいた。


オレは……いや、私は。感情のままに行動することは許されない立場だ。ヴァルヌスに帰れば一挙一動が注目され、他に与える影響も一般人とは桁違いになる。


思うまま、ありのままにいてはいけない。


それだからなおのこと、桃花への接し方は慎重にならなくてはいけなかったが。


もう、時間がない。タイムリミットはすぐだ。


(しっかり捕まえておかないとすぐに惹かれるやつらが現れるからな……)


その代表格である桂木が病み上がりの桃花へ何かをしているとは思えないが、アピールを始めているかもしれない。それを想像しただけで気が急いた。

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