Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
外が好きなのに内向的という息子のおかしな性格を、母上も直したいと思ったに違いない。母上が訪れた旧友という女性の邸宅では、ずいぶん年上の少女が案内役にあてがわれたから。
“はじめまして、カイ王子。わたくしは奈美と申します”
私より十近く年上だったであろう彼女は、淡いピンク色のワンピースを着て頬を薔薇色に染め目を輝かせていた。
その時はまだ幼すぎて解らなかったけれど、大人がすぐに子どもを2人きりにさせようとしたこととか。可愛らしくてお似合いですわ、と媚びた笑顔を向けてきたことから。あちらの大人の意図を察するべきだったかもしれない。
“カイ王子はお花がお好きですか? 我が家には冬でも温室でたくさんのお花が咲いてますのよ”
花、と聞いて大人の話に退屈していた私は、すぐに食いついた。母上は行ってらっしゃい、と乳母と侍従と警護の同行を条件に許可を下さる。
また大人がぞろぞろ着いてくるか、とうんざりしたけど。奈美に案内されサンルームに足を踏み入れた途端にどうでもよくなった。