Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
白、黄、赤、紫、オレンジ、ピンク……名前も知らない色とりどりの花が、サンルームの中で咲き競っていた。
“カイ王子、こちらは珍しい色でございましょう。わたくしの伯父が開発した新しい品種ですのよ”
ひとつひとつの花をじっくり見たかったのに、奈美はやたら私にまとわりつき話しかけてくる。今まで自分のペースで遊ぶのが当たり前だった私には、とてつもなく苦痛で退屈な時間だった。まるで拷問にも等しいつまらなさに、3つの子どもがいつまでも耐えられるはずがなくて。
やがて、サンルームのガラス張りの外を眺めるようになった。
(……雪だ)
外は雪景色ではあったけど、空は晴れていたはずなのに。いつの間にか鈍色の雲が空を覆い、ふわふわと雪が舞い降り始める。
ヴァルヌスでは雪など珍しくもなかったが、その土地では何年に一度かの大雪だったらしい。羽毛のような軽さで舞う雪を見たくて、私はサンルームのガラスに顔をつけて外を眺める。
そして、近所の住んでいる人たちだろうか。 何人かの子どもが、雪が積もる空き地で遊んでいて。
その内の一人……赤い毛糸の帽子を被った少女が振り向いた瞬間、自然と目が合った。
その少女がニコッと笑ったのが遠目にもわかり、何だか胸が温かくなるのを感じた。