Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
夢の中で、またマリアが叱りつけてきた。どうせ徹夜でやるなら、ゲーム機の修理より桃花を口説け、と。
(わかってるんだがな……)
パーティーで気を失わせるほど激しいキスをして以来、気まずすぎてろくに顔を合わせられない。話しかけようとしても、桃花がなんとなくよそよそしく感じて挫けそうになるが。このままではいけない、と気を引き締める。
(というか、マリア! 夢の中まで出てくるってマジで怖いぞ)
幼なじみの怖さは身に染みて知っている。祖父王さえ手玉にとる本物の雅幸でさえ、マリアには何もかも敵わない。もしかすると、マリアに敵う男なんていないんじゃないか? とさえ思えてしまう。
「マリア……(おまえ怖いぞ)」
そんな呟きがよもや自分の口から出ているなど知らぬまま、オレは人の気配を感じてハッと目を醒ます。まさか、本当にマリアが来たのか?
「マリア?(もう来るなんて早いぞ。予告してから来てくれ)」
名前を呼びながらぼんやりする目を開けば、そこにいたのが桃花とは思わなかった。
桃花の声で、呼ばないでと聞こえた気がする。唇に柔らかい感触を感じたのは、もしかして触れてきたんだろうか?
君を、マリアと間違えて呼んだとでも?
(違う……マリアと間違えたりはしない)
思わず彼女に向かって手を伸ばし、その身体を腕の中に閉じ込めた。