Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
別に油断はしていなかった。自分だけに留まらず、間近な人への危険が増すことは予測済み。
もちろん、最も大切なひとである桃花への護衛も密かに着けていた。無論独断ではなく、雅幸経由で祖父王にも許可を頂いてある。
この10年ずっと護られていたなどと、きっと桃花は知るまい。知らなくてもいいことだ――オレの執着のせいで、とある組織に目をつけられてしまったなどと。
『モモカ様は無事に出勤されました。途中で不審な人間を見かけましたが、こちらの警告一発で逃げましたから。おそらくただの民間人でしょう』
桃花が徒歩で出勤した、との報告があって焦ったが。護衛が見守るだけで特に何もなかったようだ。今日は……だが。
(だが、いつまでも無事ではいられまい)
小国とはいえ、ヴァルヌスの王族という肩書きだけで、テロや暗殺のターゲットになりやすい。民間人を標的にするよりも、遥かに効果的で世間への影響を及ぼせるからだ。
無論、その周囲の人間とて同じ。桃花の危険が増している現状では、安穏と口説いてばかりいられない。
(マリアにも協力を仰ぐか……)
マリアの父が将来帰化する娘の身の安全を考え、日本で作り上げたシークレットサービスが頼りになりそうだ。あまり借りは作りたくないが、背に腹は代えられない。
(桃花への告白は、帰国ギリギリになりそうだな)
マリアの番号を呼び出しながら、小さくため息をついた。