Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
(あと、もう少しだ)
少年に頼まれたゲーム機の修理を、休憩時間を利用して続けた。大谷フロア長が何かがなり立ててきたが、今は私用だからと右から左へ流す。働いてる社員のシフトすら覚えていない、怠惰なやつにいちいち付き合う義理はない。
仮にも給料を貰う公的な時間に私情が混じった、売り上げにならないことをするはずがないだろうに。きちんと一人一人を見ていないから、余計なフィルターで公平な判断が出来ないんだ。
チラッと横目で桃花を見遣れば、坂上という女性にタブレットの操作方法を教えている。優しくて根気強い彼女は、誰かに何かを教えるのも得意だ。最近は藤沢にも料理を教えているのも知っている。
(……桃花は本当に料理が好きなんだろうな)
あの創立記念パーティーの日。富士美と話した際にその事を教えたら、彼女は鼻息を荒くしていいことを閃いたわ! と叫んでた。
“元は悪くないのに自分磨きを怠っていた桃花を甦らせて気づいたの! やっぱり女性は元から綺麗にならなきゃダメよってね。医食同源! 食べ物ってとっても大切じゃな~い?
健康になると同時に美しくなれる自然食レストランなんてどお? もちろん、桃花を招く口実としては最良だと思うけど”
富士美にすら気持ちがバレバレだったかと愕然としたが、彼女の謎めいた笑みに気を取り直す。
“大丈夫、桃花はきっとお料理関連で新しい夢を持つはずだから、アタシががっちり掴んでヴァルヌスまで連れていくから。あなたは桃花にがっかりされないように、しっかりと自分磨きを頑張りなさい”