Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
いろいろ妄想をしてる場合じゃない、と頭を振って作業を再開する。それでも気になってちらちらと近くの桃花を盗み見る。
案の定と言うべきか、途中でパートの大谷が桃花に絡んできた。坂上さんがどんな人か知らないから、と内心苦笑いしながら見守る。もちろん、退っ引きならない状況になれば助けるつもりで。
大谷はいつも通りに桃花を一方的に悪者に仕立てようとする。だが、坂上さんの反撃にあっさり返り討ちされていた。反論の隙もない彼女の言葉に、大谷は歯噛みしながらも、桃花を憎々しげに睨み付けている。
だが、桃花が目を離した瞬間に、大谷の口元が嫌な感じに歪み笑ったのを見逃しはしない。
(あれは……何かを仕掛ける時の人間の目だ)
それも、犯罪に絡むような。
人間、不思議なことに嫌な予感というものほどよく当たる。オレは直ぐに桂木に連絡を取った。
「オレが懇意にしている刑事が地元の警察署にいる。今は担当する事件がないらしいから、そちらへ連絡をつけておいてくれ。」
『わかった。ひとまず何かをあったら直ぐに連絡する、でいいんだな?』
「ああ。不自然にならないよう、ひとまず地元の交番から警察官が出向く形にしよう。あと、女性だったら大隅刑事をと頼んでおいてほしい。本庁からこちらの対応へ回された専門家だから」
『了解。本社や警備にも警戒を強めるよう伝えておく』
桂木との連絡をつけて息を吐く。
……これで、終わりにしてやる。追い詰めて社会的に抹殺してやろう。桃花の人生を狂わせた罰だ。本当は生ぬるいくらいだが、桃花が望まぬ限りは命だけは助けてやる。