Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
「水科さんの件は全て大隅に担当させます。大隅ならば、細やかな気配りとフォローが可能ですから」
「ああ、頼む」
桃花を連れて地元の警察署に向かった際、阿倍野(あべの)警部に挨拶をしておいた。これから先桃花がお世話になるのだから、きちんとした方がいいと思って。
阿倍野警部はもともと母上の幼なじみで、幼い母上がお姫さまになる! という夢を抱いたら“それなら僕が守ってあげる”と言い切った強者。宣言通りに母上は異国で王太子妃になり、阿倍野警部はA県警に入りVIP警護に関わる立場となった。
彼自身が未だに独身なのは、危険が多い仕事で家族に心配をかけたくない、という理由かららしいが。
彼と母上の間に信頼や友情以上の何かがあったのか、今となってはわからないけど。阿倍野警部はオレが物心ついた頃から、日本に来る度に優しい目で見守ってくれた。
そう、まるで父上に似た暖かく包み込まれるような深い優しさで。
父上を早くに亡くしたオレにとって、定期的に会う阿倍野警部は密かに第二の父親のようなものと思ってる。彼にはよく自分の内心をぶちまけるし、相談ごとも多い。 幼なじみで侍従長のアルベルトよりよほど間近な存在だった。
「……組織の目星はついています。スナイパー(狙撃の専門家)を雇ったという情報もある。くれぐれもお気をつけください」
「もちろんだ」
桃花を狙うのは、おそらくオレへの警告だ。オレより警護が緩くて、狙いやすいと踏んだのだろうが。そうはさせない。
(明日……決着を着けてやる)
密かな決意を胸に、警察署を後にした。