Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
表立っては警察が動いてくれているが、内向きには専門の人間を雇っている。警察で対応できる事にも限度がある以上、それなりのプロを使うのは当然だ。
プロの狙撃手(スナイパー)が雇われた情報は、阿倍野警部に伝えられずとも把握している。一番厄介なのは桃花が警察署に寄り、出勤する経路。
マンションの敷地内からスーパーまでは、堅牢な警備を敷けてはいるし、警察署に入ってしまえば安心だが。その他の一般道が厄介だ。桃花はおそらく警察署まではバスを使うだろうが、ほぼ定時に一定の経路を通過するそれこそが、ターゲットを狙いやすい。 箱の中にじっとしている標的ほど撃ちやすいものはないだろう。
こちらも桃花の危険性を減らすために、考えねばならない。バスを使えば最悪運転手を撃たれ、そのまま事故に偽装して乗車している人間ともども始末されかねない。
(ヴァルヌスのレアメタルがそれだけ欲しいか……まったく、厄介なことだ)
オレを脅してきている組織は、おそらく国際的なものだ。日本へ優先的に輸出しているレアメタルを、他国へ振り分けるルートを開けと。
正規の政府からの要求ならば、一考もするが。政府と対立する認められない組織の支援を受けた勢力の要求では、到底容認出来ない。
レアメタルはITが必須となった現代では今や宝。微量しか産出せずで相当な価値があるから、“レア”と呼ばれる。 レアメタルなくしてIT産業は成り立たないゆえに、価格が上がれば莫大な富を手にすることになる。
おそらくそれに目をつけたのだろうが。オレにとってはレアメタルよりも桃花の方が遥かに価値がある。
だから、やつらに屈する訳にはいかない。桃花を危険に晒すわけにはいかなかった。