生意気な年下の彼
「和真くん?」

 これ以上少しでも触れたら抑えきれない。そう判断した俺はおもむろに絵梨から離れ、ベッドの脇に置いてあったバラのブーケを差し出した。

「本当はこれがチョコのお返し」
「え?わ、いいの?」

 目を丸くした人って初めて見た。
 そんな下らないことを頭の片隅で思い、黙って頷いた。

「ありがとう!嬉しい。ピンクのバラってかわいいよね」

 本当に嬉しそうな様子を見て、自然と俺も笑顔になる。

「絵梨のイメージに合ったから」
「ピンクが?」
「うん。本当は白だけどね。そうあって欲しいっていうのもあるよ」

 俺の言ってる意味にきょとんと首を傾げる絵梨。
 先程の沼から抜け切っていなかったのか、俺は口を開くと同時に彼女を抱きしめる。

「俺が染めていきたいから───染まってよ、俺に」

 すると絵梨はそれに答えるように俺の背中に触れ、顔を埋める仕草をとった。
 そして微かに届く返事。

「和真くんしか出来ないよ、そんなこと」

 そう言った絵梨は、傍らに転がったバラのような淡いピンクに染まった───


 END

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