生意気な年下の彼

　何だかくすぐったい空気に包まれ、期待に胸を膨らませる和真に気づいているのかいないのか、遥は話を続ける。
　
「やっぱ男子からきて欲しいよね。不意打ちチュー、憧れるぅ。ね？絵梨」
「…うん」
「後ろから抱きつかれてがいいかな？あ、でもそれじゃ不意打ちは難しいか」
　
　やや興奮気味の姉はさておき、和真は絵梨の真意をくみ取るべく、じっと見つめる。
　すると、先程と同様に、絵梨は目があった瞬間に恥ずかしそうにうつむいてしまった。
　
　先程の姉のセリフといい、彼女の態度には和真への好意が寄せられているように感じる。
　これが勘違いなら文句言ってもバチは当たらないよな。和真は心の中で頷いた。
　
「あ、和真、冷蔵庫からオレンジジュース持ってきて」
　
「お願い」と甘えたように言う姉に顔をしかめながらも、言われた通りにジュースを手に、二人のいるテーブルに近づいた。
　
「ありがと。あたし、ちょっとトイレ行ってくる」
「俺が持ってきた意味は？」
「まあまあ」
　
　不満を口にする和真を横目に、遥は含み笑いを浮かべながら通り過ぎる。
　小さく息を吐きながらジュースをテーブルの上に置くと、絵梨が困ったような恥ずかしいような表情を浮かべ和真を見つめていた。