生意気な年下の彼
「んー……」
 
 少し怒ったような顔をして、うなるように深く息を吐く彼女を見て、和真はだんだんと不安を抱く。もしや全て勘違いだったらどうしようか、と。
 
 ガチャ。
 トイレから戻ってきた遥がリビングに通じるドアを開ける音に、和真は内心飛び上がった。
 座っている絵梨にキスをするためかがんでいた和真は、テーブルについていた手に力を込め、その勢いで体を起こそうとする──と、その時、絵梨は和真にだけ聞こえるように呟いた。
 
「和真くんて、コーラの味がするんだね」
「!」
 
 思いもしなかったセリフに、今度は和真が赤面する。
 どうやら怒っても嫌われてもないようだが、和真は“してやられた感”に何だか複雑な気持ちだった。
 
「先輩、エロい」
 
 悪あがきのようになった言葉を残し、和真は部屋に戻ろうとする。
 背後で姉が何やら言っているが、答える気はなかった。
 リビングを出る際に一度振り返り、絵梨へ合図を送る──自室を指差し、声には出さずに「来て」と。
 
 彼女は真っ赤になりながら小さく頷いた。
 
 
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