南くんの秘密。



匂いを嗅いだだけでも大興奮。

現金なことに、ここまで来るのに重かった気が一気に吹き飛んでしまった。


「良かったわ。でも、蒼斗は甘いものがあんまり得意じゃないみたいで。無理して食べてくれてるのは分かるんだけど」

「そうなんですか…」


…でも無理して食べるんだ。

お母さんの為に。


「だからあんまり作っても蒼斗が可哀そうでね。でも今日は佐々木さんが来てくれるっていうから久しぶりに作ってみたの」


ちょうどその時ピーッという電子音が鳴り、オーブンの中の光が消えた。

鍋つかみを手に、お母さんがオーブンの中からトレーを引き抜くとシュ―生地がいくつも顔を覗かせた。


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