南くんの秘密。
「それじゃあ……失礼します」
ひたすら謝ってさんざん泣いて。
お母さんの胸から顔を離すと、あたしはそう言った。
次は学校に行って南君に謝らなくちゃ…
「ちょっと待ってて」
すると、帰ろうとしたあたしをお母さんが引きとめた。
1度奥に姿を消すと、戻ってきた時には小さな紙袋を手にしていた。
それをあたしの前に差し出す。
「これは?」
紙袋とお母さんを交互に見比べて。
「この間作ったガト―ショコラ。佐藤さんが作ったんだから食べてもらわなきゃね」
「いいん…ですか…」
ためらっているあたしの手を取ると、お母さんはいつもの笑顔で紙袋を乗せてくれた。
「ありがとうございました――…」