南くんの秘密。
あたしは1時間遅れで学校に向かった。
おはようも言えず。
数学の教科書を忘れたのに見せて…とも言えず。
結局、放課後まで一度も目が合うことはなかった。
当然だ。
南君が好きになった“佐々木さん”は。
いつも南君の家に上がりこんでいたのは。
…隣の席のあたしだったんだから。
嫌われちゃったとしても、謝らなきゃ。
告白はもう諦めた。
もちろんガトーショコラだって作ってない。
南君の顔を見たら、なんて謝ろうか言葉の整理がますますつかなくなって
部活が終わるまで待とうと決めた。
そしてゆっくり謝ろう…
そう思っていたのに。