南くんの秘密。
突然その綺麗な顔をあたしに向けられドキッとする。
南君がマザコンだろうがなんだろうが、彼を形どるものは何も変わらない。
そんな綺麗な瞳で見つめられたら、ドキドキするものはドキドキする。
隣の席って特権を使ってこうして話しかけてもらえられているけど、これだけだって周りの女の子たちを妬かせるには充分。
ホラ、今だってあちこちから突き刺さる視線が矢のように痛いよ。
「何でもない何でもない。お母さん喜んでくれるといいね」
「ああ、渡すのが今から楽しみ」
またパァッと笑顔になる南君。
あたしは贅沢にもその視線を自分から逸らす。
だって、今の南君の笑顔は"あたしに対して"じゃなく、お母さんに向けられているものだもん。
「お母さんによろしくね……」
あたしはちょっと苦笑いしながら、それでも精いっぱいとなる社交辞令の言葉を告げた。