南くんの秘密。



話し好きなのか、商品をレジに通しながら『高校生でしょ?いつもお買い物のお手伝いえらいわね』と、あたしが最近通ってきていたことを知っていたらしく気さくに話しかけてくれた。


あたしは緊張しながら「はい」とか「ええ」とか答え、心の中で密かにガッツポーズを作った。




そしてある日。

スーパーの外でばったり会った。


「今日はもうお仕事おわりですか?」


今やすっかり顔馴染み。

あたしは笑顔で南君のお母さんに話しかけた。


「そうなのよ。これから帰るところ」


スーパーの制服を脱いだお母さんは、いつもの柔らかいイメージに更にふんわりした印象を与えた。


「あなたは家、この変なの?」

「ちょっと向こうの方ですけど」


少し言葉を濁す。

あまりに近いのも嘘がバレそうだし、本当のことを言ったらあんな所からなぜこんな所に、と思われるから。


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