南くんの秘密。



ギクッ…

南君のお母さんに声を掛けられてしまった。


やばい。

制服で来たことを心底後悔した。


というか着替えたくても、家に入る間もないままあたしを車に連れ込んだママを恨むしかない。


「こ、こんにちは」


あたしはたった今気付きました、という顔で余所行きの笑顔を作り挨拶をした。


前回野菜まで分けてもらい、家にまでお邪魔して居るだけにこれだけでは済まない。


「ママ…この間野菜くれた方……」


実際のところ野菜を受け取って調理をするのはママなのだから、人としてママにもここでそれを言わなければならない。


ママは"あらっ"という顔をして「その節はどうもありがとうございました」とまた余所行きの笑顔を作ってお礼を言った。


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