ナイト!



「…………」

「ーーーマサの匂いがする」




そう言って南雲くんはあたしを抱きしめる。




「ど、どうして」

「どうして?君が泣きそうな顔をしてるのに?」

「は、離してっ…」

「泣きそうな女の子を見捨てるほど、俺は卑怯ではない」

「っ……」

「たぶん、君は溜め込みすぎなんだよ。一人で頑張りすぎてる」

「そんなこと…!」

「"見ている人"は見てるんだから、この学校にいる限りは、自由に過ごしてくれ」

「な、何を…」




南雲くんは、あたしの事情は知らないはず。

決して知らないはずなのに。




「凛、」

「っ……」

「君は、何を背負ってる?」







南雲くんの、漆黒で、引き寄せられる瞳には、

誰も勝てやしない。




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