雨のち晴れ
和也は走った

走って走って
愛する娘のもとへ


「春菜…聞こえるか?」

春菜の反応はない


「春菜…ごめんな。本当に本当にごめんな。父さん、本当にダメな親だなぁ。お前の気持ちに気づいてあげられんで、本当に本当にごめんな。春菜と優香のこと、先生から聞いた…本当に本当に…ごめんな」

和也は泣きながら今までの自分の父親としての情けなさを恥じた


「なぁ、春菜。父さん…もう一度お前の顔がみたいよ。お前の笑った顔がみたいよ」



近くで橘も見守る

長い沈黙の後で
春菜が口を開いた


「お父さん、泣いてるの?私、大丈夫だよ。お父さんが思ってるほど、傷ついてなんかないよ。だから、優香のこと…責めないであげて」


「春菜…おまえ…」


そんな中に
どすっどすっと階段を掛け上がる音がした
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