-悪魔が紡ぐ恋の唄-
そう言って、希蒼の
左手を指差した。
見ると、手の甲を
少し擦りむいていた。
しかし怪我という程
でもない。
少し血が滲んでいる
だけの擦り傷だ。
「ああ、大丈夫です。
心配してくれて
ありがとうございます」
マニュアル通り。
これで人間はさっさと
帰って行くはず。
はずなのに………
「だ、だめだよ!!
バイ菌はいっちゃう」
そう言ってカバンを
ごそごそと漁る人間。
なんだよコイツ。
マニュアルがまったく
役にたたないじゃないか。
こういう人間は
嫌いだ────
「………????!!!」
希蒼は激しい頭痛と
めまいで倒れそうになる。
しかし、小さく呻いた
刹那、その痛みは
きれいに消え去った。
変わりに頭の中に
言葉が流れ込んでくる。
『お前のターゲットは
鷲宮雛智(ワシミヤ ヒナチ)に
決定した。
時間は今より一年。
それ以内にターゲットを
抹殺しなければ、
再教育とする。
詳細はメールで
知らせるとする』
一気にそれだけ言うと
声も聞こえなくなった。