ラブレター
「白沢?名前は?」

「ほのか」

「ありがと」

そう言うと彼はどこかに行ってしまった。

私は食べ終わったお弁当を片付け、再び小説に目を落とした。

*****

授業が終わり、私は市立図書館に向かった。知ってる人は誰もいないし、小説を読もうが、勉強をしようが自由だ。私はいつも閉館までいる。

学校の最寄りの図書館は、個人ブースがあり、周りと仕切られているから周りの目を気にする必要もない。

いつも誰もいない個人ブースに今日は初めて先客がいた。高校入学して通いつめていたが、3年目にして初めてだ。

私はビックリしたが、私がいつも使う場所は空いていたので気にしないことにした。

*****

閉館時間の9時までいて、今から家に帰ろうというところで私は最大のミスをおかした。私は悪くないのだけれど。図書館の最寄り駅からの電車が遅れたため終電を逃してしまったのだ。
走れば終バスには間に合うだろうか…

「終電逃した?やべ。帰れねぇ」

いろいろ考えているときに後ろから声が聞こえた。

振り返ると転校生がいた

「家どこですか?」

私は思わず声をかけていた。

「33分の電車で藤駅ってとこで降りて徒歩7分のとこ」

「走れば終バス間に合うかもしれませんよ?」

「白沢さんは?」

「私も同じ電車…」

そう言うと突然走り出した。

「俺バスとめるから。お前も走れ」

彼は走りながら叫んでいた。
気づいたら私も走っていた。中学3年間陸上部だったから走りにはそれなりに自信あったが、彼の足は私以上に速かった。

*****

「気持ちよかったね。俺走るの好きだ」

彼のダッシュのかいあり、私たちは見事に終バスに間に合ったのだ。

「あの…ありがとうございました」

「なーんも。ってか白沢さん間に合ったじゃん。足速いんだね。ってかまた本読んでるし」

彼の話が長くなりそうだったから私は再び読書を始めていた。

「酔わないでよ?いつも電車なんでしょ?バス慣れてないんじゃないの?」

そう言われて気づいて、読書をやめた。

*****

『トントン』

「どこで降りるの?俺次だけど」
「ありがとうございます。次の次です」

助かった。彼がいなかったら私は絶対に寝過ごしていただろう。

「そっか。いつも電車だよね?お金持ってきてる?大丈夫?」

「あ、それは大丈夫です」

安心したように軽く笑って降りていった。
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