さくらへようこそ
そこまで話した後、達也は洟をすすった。

「腕の中の我が子は笑っていて、その人も笑っていました。

一緒に笑っている２人はまるで本当の母娘のようだったと、彼女は言っていました。

同時に、もうその子は自分の子供じゃないと言われたような気がしたと言っていました。

彼女は『ニコニコ横町』を立ち去って、いろいろと職を転々としながら生活をしました」

安部は達也に視線を向けると、
「その人――さくらさんの生みの母親は、まだ生きているんですか？

生きて、あなたのところで働いているんですか？」
と、質問をした。

達也は首を横に振ると、
「残念ながら…」
と、呟くように言った。

「彼女は泣きながら俺にそのことを話した翌日に心臓発作で亡くなりました。

今年の３月のことでした」

洟をすすった達也の前に、美桜はティッシュの箱を差し出した。
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