さくらへようこそ
バタンと、店内に響いたドアの音に美桜は息を吐いた。

――子供が欲しいと思っている母親には子供がこなくて、子供はいらないと思っている母親には子供がくる

育ての母親、桜野は理不尽だと言って嘆いた。

幼い頃から病弱だったと言うこともあり、桜野の躰は子供を生むことができなかった。

それが原因で夫から離婚を告げられたのだ。

子供を生めない嫁はいらない、と夫の家族からそう言われたのだそうだ。

家を追い出され、路頭に迷っていたその時に生まれたばかりの美桜を見つけた。

1人ぼっちの美桜に、捨てられた自分が重なった――と、桜野は言った。
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