さくらへようこそ
美桜は手で口をおおった。

「その話を聞いた時、つらかったよ。

トイレに行くことなんか、どっか行った。

2人に気づかれないように自分の部屋に戻って、頭からふとんをかぶって泣いたんだ。

父親だと思っていた人は、実は血が繋がっていない赤の他人だった。

ショック以外の何ものでもなかったよ」

忍は洟をすすった。

「だけど中2の時に親父が死んで、おふくろから親父は最後まで俺のことを気にかけていたって話してくれた時…血が繋がっていなくても、親父は俺のことを愛してくれていたんだなって思った。

実の息子のように俺を育てて、愛してくれたんだって思った。

俺とおふくろを捨ててトンズラした情のない男が父親じゃなくてよかったって思った。

親父でよかったって思ったよ」

潤んだ目を細めるように、忍は笑った。
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