さくらへようこそ
「私だって困ってるんですよ?

くしゃみしたらすぐ飛んじゃうような小さなお店を1人で経営しているんですから、少し同情してくださいな」

美桜はやれやれと言うように両手をあげた。

「あっ、牡蠣(カキ)もある!

今が旬ですものねー、牡蠣フライにしますかな?」

「さくらちゃんには負けるよ…」

吟味している美桜に、おじさんは参りましたと言うように呟いた。


魚市場で買い物した後、野菜市場にも顔を出して魚と同じく、野菜もたくさん購入した。

太陽が真上に昇った頃、美桜は自宅へ帰ってきた。

「ただいまー」

ドアを開けてテーブルの方に視線を向けると、男の姿はもうなかった。

さすがにこの時間になれば、男も起きてどこかへ行ったのだろう。
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