さくらへようこそ
輝はハトが豆鉄砲をくらったところを見たような顔をしている。

「どうしたの?」

美桜はどうして輝が驚いた顔をしているのか理解できなかった。

「さくらって…名前じゃないんですか?」

そう聞いてきた輝に、
「名前よ?」

美桜は答えた。

美桜はグラスについている水滴を指先につけると、テーブルのうえに自分の名前を書いた。

「美しい桜で、美桜…ですか。

なるほど、確かに名前に桜が入ってますね」

納得したと言うようにうなずいた輝に、
「さくらはあだ名なんだよ」

不動産屋が言った。
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