迷いの森の魔女
鬱蒼と生い茂る樹木は日光を遮り、迷いの森は昼であっても薄暗く不気味な雰囲気を漂わせていました。


「ここが、迷いの森…」


ジークは一瞬だけその不気味さに慄き、足を踏み入れることを躊躇います。
この森に入った人間は二度と帰ってこれない―…村で聞いた噂は、決して嘘ではないように思えました。


「けれどこの呪いを解ける魔女がいるのかもしれない。行かなければ」


そう、彼が冒険者として旅を続け、魔女の噂がある場所に訪ねるのには理由がありました。
彼は幼い頃、とある呪いを受けたのです。ジークの母親を妬み、嫉妬に狂う女から受けた呪いでした。


『お前は20歳の誕生日に死ぬ。ふっ…ふふふ、あの女も愛される人を奪われる苦しみを味わえばいいのよ』


頭の中であの時の女の哄笑がこだまし、ジークは堪らず目を閉じました。

それは小さい頃のジークにはわからない言葉でしたが、今となってはその意味を理解することができます。あの時のことを思い返すだけでジークは寒気と同時に吐き気を覚えました。


「…っ、は…日が高いうちに行かなければ」
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