迷いの森の魔女
「…何故、人がここにいる」


凍えそうな程冷たい声に、ジークははっとなって顔を上げました。
吐き気は治まらず酷くなる一方ですが、蹲ってなどいられません。声の主が魔女かもしれないと期待が膨れ上がりました。


「あなた、が…魔女?」


揺れる視界の先に黒いフードを被った人影が、ジークは懸命に目を凝らしながら尋ねます。


「魔法が切れて…いや。この匂い、お前香り袋を持っているね?」


ジークの問い掛けを全く無視し、突然現れた女は無遠慮に鞄を漁り始めました。


「やはりか。一体誰の入れ知恵…あぁ、ただの偶然か。余計なことを」


一人ぶつぶつとつぶやき女は深々と溜息を零します。
苦しげに呻くジークを一瞥し、更に深く溜息を零しました。


「お前は自殺志願者?」

「お、れ…は」

「いい、口を閉じて」
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