兄妹の話



得物を持ったふたりの間には、最早互いに対する恋慕はなく、互いに対する歪んだ愛情が激しく燃えていました。



「……行くよ、兄貴」



「……嗚呼、×す気で来い」



兄貴こそ、呟いた言葉は風切り音と同時に消えいつの間にか兄が目の前にいました。



「……いっそ×して。そして、……」



×してよ、自分でも聞き取ることが出来ない程小さく囁くと兄の攻撃を刃先で受け止め、そのまま力で押し切ると兄から距離を取るために跳躍だけで後方へ下がりました。



「……兄貴、多分これが最後の『死合い』になる」



「奇遇だな。……俺もそう思ってた」



互いに充分な距離を取り、相手の隙を伺う。しかし言葉とは裏腹にふたりの口元には微かな笑みが浮かんでいました。



「ねぇ兄貴。あたしが勝ったら、兄貴に言いたいことがあるんだ」



「……いいだろう。ただ俺が勝ったら、俺が言いたいことを聞いて貰おうか」



隙を伺いながらも話続けるふたり。その姿はまるで恋人同士のようで……



「……たぁぁぁぁぁっ!!!!!!! 」



「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!! 」



ふたりは相手の胸に抱き着くように、相手の懐に潜った。






-The End-
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