闇の中で束の間の夢を
「……お父様遅いねー」
「仕方ないさ、お父様はお忙しい方だし……」
彼が家路を急いでいる頃、彼の自宅ではふたりの子どもが彼の帰りを待っていた。
「でも、今日は私達の誕生日よ? 少しぐらい早く帰ってきたって・・・」
「こーら。我が儘言わないの」
美しいブロンドに、透き通るようなエメラルドの瞳を持った少年は諭すように言うと、無粋そうに唇を尖らせる少女の頭を優しく撫でる。
「だって、去年も誕生日をしたのは次の日だったじゃない。私は、ちゃんと今日誕生日をしたいの」
頭を撫でられた少女はそれでも不服そうに言うと目の前の少年を見詰めた。
「それに、去年は貴方がいなかった」
私達は双子なのに、そう言外に匂わすと玄関の扉が開き彼等の父が息を切らせて帰ってきた。