闇の中で束の間の夢を
父は両手いっぱいに荷物を持ちふたりを代わる代わるに抱き締める。
「おかえりなさいお父様」
「おかえりなさい」
ふたりはそれぞれ口にすると父の頬に口付け力強く抱き着いた。
「ふふ、かわいい私の子ども達……ほらキミ達へのプレゼントだ」
父はふたりにプレゼントを渡すと柔和な笑みを浮かべ満足そうに頷く。
「開けてもいい? 」
「嗚呼、勿論だよ。開けて御覧」
少女はうれしそうに言うと箱の包みを解き中身を取り出し感嘆の声を上げる。
「……ドレス」
「今度のパーティ用のさ。ほら、お前も開けて御覧」
少年は頷き箱から少女と同じ形のタキシードを取り出した。
「……お父様、これは」
「我が社の正式な礼装さ。お前達はこれを着て、明日行われる我が社のパーティに参加するんだ」
黒を基調としたドレスとタキシードはふたりに誂えたようにぴったりで少女は再び父に抱き着いた。
「ありがとう、お父様大好きっ」
「ふふ、ありがとう。……さぁ誕生日会をしようか。チキンを買ってきたよ」
父は少女にそっと口付けると優しい微笑とともに言った。