闇の中で束の間の夢を
パーティ会場はふたりが想像していた以上に広く、また大きなものだった。
昨日貰ったばかりのドレスに身を包み、少女は会場内を見物する。
彼女が跳ねる度に髪飾りが揺れその度に少年は釘付けになった。
「こらこら、あまり走るんじゃないよ」
そんな少女の様子を見て父は苦笑すると社員らしき人物とともに何処かへと向かう。
「嗚呼そうだ。お前も来るといい」
父はそう言って少女を手招きすると少年と別の社員を残して会場の奥へと消える。
残された少年はともに残された社員を見詰めると小さな溜め息を吐いた。
「……お坊っちゃま、お暇ですか? 」
「う、ううん。暇じゃないよ、大丈夫」
左様に御座いますか、社員は言うと何か思い付いたように会場の端へと向かう。
「社長とお嬢様がお戻りになられるまで、少しゲームをしましょう」
根はいい人なのだろう、柔和な笑みで言うとゲームの説明を始める社員。
少年はその社員の人柄に惹かれ彼とのゲームを父達が来ても続けていた。
少女がどんな表情をしていたかも知らずに。