闇の中で束の間の夢を
「美しいお嬢さん。どうかわたしと踊って頂けませんか? 」
パーティが始まり少女は丁寧な物腰の男性と一緒に踊っていた。
この男性の前は別の男性と踊り、その前はまた別の人と……。
まだ始まったばかりだというのに、少女は既にくたくたになっていた。
「ごめんなさい、私疲れてしまったので少し休みますね」
そう言いながらまるで逃げるようにその場を離れ密かな溜め息を吐く。
「……大丈夫かい」
聞き慣れた声に振り向くと少年が飲み物と料理を少女に差し出していた。
「もうへとへとよ……パーティって楽しいけど、すごく体力がいるのね」
初めてのパーティで気張っているところもあるのだろうか、少女は近くにあった椅子に腰掛ける。
「暫く休んでるといいよ。……俺はもう少し踊って来る」
飲み物と料理をテーブルに置くと清楚で上品そうな見た目の女性をエスコートする少年。その姿に少女は胸が痛くなるのを感じた。