いつもので。


命令形で言われても不思議と受け入れていて、でも真意がわからなくてじっと見つめた。


「おまえがいるときに、ここに来ているのが偶然だと本当に思っていたのか?」


「…違うんですか?」


彼は呆れたようにわたしを見て、ため息をこぼした。


「鈍感。おまえがいるからだって気づいとけ」


…すごい無理を言われてる気がする。

気づいとけって言われても、そんなポジティブな思考を持ってないよ。


「あの、さっきのって…」


「さっき?」


「…俺のもの、って」


それはつまり…


「ああ。そのままの意味だけど?」


「……そのまま」


残念ながら恋愛経験は豊富ではない。

こういう駆け引きみたいな言葉のやり取りはわたしには難易度が高すぎる。


「その代わり、俺もおまえのものになってやる」


ますますわからない。

よくも知らないわたしに対して、わたしのものになるだなんて言えるもの?


「どうして、そんなこと言えるんですか?もしかしたら、わたし、すごく性格が悪いかもしれないですよ?」


「俺が惚れた女の性格が悪いわけないだろ」


「なっ…」


今、惚れた女って言った。


「鈍いから言っとくけど、惚れた女っておまえのことだから」


わたしが惚れた女…?


「それって、好きってこと、ですか?」


どうしても確かな言葉が欲しくて、そう口にすると、眉間にシワができた。



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