いつもので。
やっぱり自惚れだったかな…。
おろおろとしてると、「すずちゃんっ」とわたしを呼ぶ声がしてカウンターから梨麻さんが足早に向かって
くる。
その後ろには苦笑いした店長もいる。
「だめよ、すずちゃん、おすすめしないわ。この男、俺様だしどSだし面倒だし無駄に意地が悪いし、いいとこないの」
彼から引き剥がされて、がしっと両肩を掴まれて、梨麻さんがきれいな顔で凄む。
「り、梨麻さん、どうしてここに」
「優河くんに聞いて慌ててきたの。間に合ってよかった」
にこりと微笑まれて同性だけどどきっとしてしまう。
「おい、よく本人を前に言えるな」
頭上から落とされる声はやや不機嫌なもので、思わず肩が跳ねた。
「言えるわよ。別に怖くないもの。それより、そういう態度やめなさいよ。すずちゃん怖がるでしょ」
「優河、この女はいないって話じゃなかったか?」
「すずちゃん、いい子だからねー」
答えになってない店長の返事に彼の纏うものが冷たくなっていってるような…
「あの、お友達だったんですか?」
どうやら面識があったらしい3人のやり取りに疑問を抱いて梨麻さんに尋ねると、首を横に振られた。
「いいえ。優河くんの悪友よ」
…あくまで梨麻さんのお友達ではないと言いたいみたい。
「すずちゃん、ごめんね。うそをつくつもりではなかったんだけど、こいつがすずちゃんを気に入って協力しろとか言ってくるもんだから」
「はあ…」
この際、うそはまあいいとして、それより気に入られてたんだ…。