赤い海


「あず・・・。」と言って部屋に入ってくる洸
「うん」
「俺さ花梨に怒られた」と笑う洸
「うん」
「もっと早く手紙の事いってよって。花梨が一番親に会いたがってたんだよな」
「・・・うん」

大した言葉もかけられないあたしは情けない
あたしは洸を抱きしめた
洸も抱きしめかえす

「洸・・・。あたし・・・なんも言えなくてごめん」
「・・・。」
「あたし家族の愛って分かんないからさ。何も言えないんだ」
「・・・。」
「でもね・・あたしは羨ましいよ」
「なにが?」
「花梨さんと洸。・・・喧嘩して言いたい事言い合ってお互い心配し合って」
「・・・。」
「洸はずっと幸せだったんだね」
洸は静かに泣いていた。顔は見てないけど泣いていた。
あたしは気づかないふりをする


洸の家族に嫉妬してるんじゃないよ
ただ・・・いいなって。







あたしも・・・親が死んだとき、親が死んだことに対して泣いたんじゃないんだよ
親に今会っても会わなくてもいいし
何かあたしの家って何だろう?って思ったんだよ












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