ある帝国の恋愛事情〜love trouble 〜
第一章 二節
「今日は終わりだ!休憩しろ!」
見張りの人が工場を出ていった。
すると、走る気力もなく、みんなはゆっくりゆっくり、前に進む。
もちろん私もだ。
名前なんてない。
「なぁ…」
一人の男が言った。
「ここから皆で脱出しないか?」
休憩所の大広間全体に低く、響き渡った。
「…お前、死刑にされるぞ…」
もう一人の男が言う。
「…確かに…子供に会いたいっ…」
うわんうわん泣き出した、女もいた。
でも、そんなのできるんだったら、
今こんなところにいないだろう。
「…なぁ、他の皆は、どうだ。」
皆黙る。
「じゃあ、俺一人で脱出する。」
みんなはざわついた。
「…死刑にされたって構わないわ…子供に会いたい…」
「それよりも、脱出の手段はあるのか?」
一人の男が言った。
「…あぁ、壁を壊した。」
おぉ~…
みんなはそんな顔をした。
「さぁ、脱出希望者は、俺に続け。」
タッタツ
ぞろぞろとみんなは、その男について行った。
私は、行かないことにした。
人間の欲は単純に左右されてしまう。
哀れだ。