足首の長い髪
再び水の中
「先生~ 私・・・」
皮肉を少し、言おうとした時・・

「痛っ」
左足首に ピリリとした、 皮膚が裂けるような痛みを感じた。

「ひ・・・い・・・先生・・・・・・ あぁ・・・・痛いよ・・・いやぁ」
皐月は 左足を二人の前に差し出しながら、痛みのあまりにじっとできないで
畳の上をゴロゴロと、向きを変えてのた打ち回ってしまう。

「ちょっと・・・皐月さん? だ・・・大丈夫なの?」
先生が左足首を握ってくれた。

「い・・・こ・・これで・・・ 先生っ おねがい・・・」

先生が一生懸命左足をさすってくれている。

でも痛みは消えない・・・ 先生の手の指から血がにじみ出てきた。
皐月の足首の皮膚が少し裂けてしまっていた。

「いたぁい! いやっ 怖い・・・・先生・・・鉄平ちゃ・・・」
そう言うと又、皐月は気を失ってしまった。

「鉄平くん、 これは・・・」
先生が 鉄平君の方を見ると、
数珠をねじりながら、一生懸命なにやら念仏を唱えている。
唱え終わると、皐月の足元に般若心経の札を置いた。

「うん・・・ これはやっかいだよ、美智子ちゃん」
「早く、その、紹介してくれるって人、来ないかしら」
「電話してみる」

事の次第をその人に伝えると、鉄平ちゃんはすぐに電話を切って、
又お経を読み出した。

「美智子ちゃんが居て・・本当に良かったよ」
皐月の表情が穏やかになり、 足首のねじれが収まった頃、
鉄平ちゃんは部屋の窓を開けて 美智子の横へ座って言った。

「又?」

「だって、美智子ちゃんには 太陽が宿っているから」
「ちょっとだけ・・ 俺も疲れたから、彼が来るまで寝かせて」
そう言うと 美智子の膝に頭を乗せて、鉄平ちゃんは目をとじた。

「もし・・・私にそんな力があるのなら・・ この子を助けられるのに」
先生は皐月の穏やかな寝顔を見下ろしながら そうつぶやいた。

それから1時間は何もなく、
皐月も鉄平くんも眠り続けていた。
鉄平くんは 途中、もごもごと何か寝言を言っているようだった。
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