足首の長い髪

ガラガラガラ・・・

玄関の戸が開く音がした。

「どなた？」
先生の問いに返事をせず、 足音だけがこちらに近づいてくるのがわかる。

「鉄平くんが言ってた人かしら？ ちょっと・・鉄平くん！ 起きてよ私・・・・」
先生が両手で鉄平くんの重い頭を膝からどかせた、
ドテッと落ちる寸前に頭を持ち上げて起き出す鉄平くん。

「あー良く寝た！ あ、彼来た？」
「あーーー 足が・・・足が・・・・・」
「えっ？ 美智子ちゃん大丈夫？？」
慌てて美智子の足首に手を置く鉄平くん。

「いだーーーーーーーーーー！
もぅ！ 足がしびれてるのよっ あんたのせいでっ」
「あぁ・・・そっか！ あははごめんよごめんっ」

「で、彼来た？」


「今・・・来ましたよ」
ドアがいきなり開いて、スーツ姿に銀縁メガネをした、サラリーマン風の
男がずかずかと、部屋に入ってきた。

「おー勝也くん。 来てくれたね、ありがとう」
「いえ・・・ 又仕入れさせてくれるなら いつでも来ますよ」
「あぁ・・・・・マットね！ 又お願いするからさっ」
「じゃぁ、 よろしく。」

サラリーマン風の勝也くんと呼ばれたその男は
眠っている皐月の傍で正座すると、
硬直したかのように、動かなくなった。


深い深い 水の中・・・

皐月は ゆっくりと目を開けた
息は しているのか・・していないのか・・わからないくらい穏やかで
苦しくはない。

暗闇の中で 又、 あの男の子が心配そうにこちらを見ているのがわかった。

確かこの後・・・