意地悪のっぽと強気ちび


「…………逃げ出してごめん」



少しだけ開けていた扉を完全に開けて、教室の中へと入る。

さっきまで問題集を見ていたその目は私を捉え、驚いたように少しだけ見開いた。



「…なに、諦めるんじゃなかったの?」



「いや、なんというか、ほら!せっかく今までやってきた分もあるんだし、なんかもったいないかなって思ったっていうか、ここで諦めるのってなんか負けた気がして悔しいっていうか……とにかくそういう感じ!!どぅーゆーあんだすたぁん!?」


いつもみたいな意地悪な声色じゃないことに動揺して、なんだか変なこと言った気がしなくもないけど、とりあえず気まずくて勢いに乗せて言葉を発してしまった。


「…っ、OKOK」

右手の甲で口元を隠しながら面白そうに笑う顔に、あ、いつも通りのサタン顔だ!となんだか安心する。


「もっとちゃんとした言葉が喋れるように、問題集だけじゃなくて発音とかもやらなきゃだったね」



なんて意地悪を言われたから「うるさい!」と口を尖らせそっぽを向いてやった。



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