強引上司のターゲット
腕を掴まれたまま引っ張って行かれた先は、普通に女子ロッカー。


「はい、早く着替えて来て。」


「え?あ、ハイ!」


課長がドアをノックして中からの返事も待たずにガンと開くと、急かす言葉を投げかけてあたしの背中を押した。
あまりの行動力にしっかりハイと返事をしてしまったあたしは、ドアがバタンとしまった音で我に返る。


てゆうか…何今の。
ハイとか言っちゃったけど何今の!?
大体、もらってくってなによ。
それに…新庄さんにも喧嘩売るようなこと言って。
今朝も、黒子…触ったり。
あーもう!今朝といい今といい、本当にやだ。関わりたくない!
あたしはとりあえず着替え始めたけど、誰もいないこの部屋で冷静になれたことで、あの課長には、迷惑です!とハッキリ言ってやろうと思った。


恐る恐るドアを開けると、課長はすぐ目の前で待っていた。
「準備できた?」といいながら向けられた笑顔はさっきみたいにムカつく程の爽やかさはなくて、完全に素の笑顔だって分かる。


「じゃ、行くよ」


…ズルい。
ちゃんと文句を言ってやろうと思って出て来たのに、またこんな男のオーラ出して。
その雰囲気と言葉は、確実に今朝のドキドキを思い出させていた。
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