強引上司のターゲット
タクシーはほんの10分程で到着した。

先に降りた課長が、ドアのところで手を差し出してくれたりしちゃって、なんてこっぱずかしいことを!とか思いながらも、今のあたしには魅力的だった。

失恋って、まるで自分を全否定されたかのような気になる。
あれから一ヶ月経ったとはいえ、誰かに優しくされることに飢えてたのかもしれない。


ドキドキする気持ちに今は素直になろう。課長の手を握ってタクシーを降りると、目の前にあるマンションは首が痛くなるほど高い!
なにこれぇ〜?!と思わず目を見開いていると、あたしの手をグイグイ引っ張ってエレベーターまでやって来た。

15階…
15階か。すごいな。
さり気なく押されるボタンを見て、なんだか住む世界の違いを感じる。
だって、あたしの家は、一応マンションだけどこことは全然違う。


エレベーターを降りたら、普通外でしょ?廊下は外で、下はコンクリートでしょ?
何これ?
廊下が室内?床が柔らかいよ、絨毯なの?
おまけにドア大き過ぎ!玄関トイレより広いし!

って…え?

ハッとしたら、課長がどうぞと手を上に向けて伸ばしている。

うわ!わわわ!エレベーターから自分のマンションとの違いに突っ込んでいるうちに課長の家の玄関で、中へどうぞとされていた。
< 27 / 111 >

この作品をシェア

pagetop