強引上司のターゲット
「…ひぃぃっ……!!」
吸い込むように出た小さな悲鳴はまるで聞こえませんでしたとでも言うように、ご機嫌な顔でキッチンへ消えた課長。
いっ、今。いま!イマ!
キスされた…
おでこにだけど。
おでこにだけど…
キス、された。
ぷしゅ〜と空気が抜けたようにヘナヘナになって、その場にしゃがみ込む。
「ねぇ瑞花!ちょっと来てー」
キッチンから呼ぶ声は何のためらいもなく“瑞花”と言うけど、そんなの今更なんとも思わない。
「早く早く!」
急かす声に、あぁきっとこの人は、あたしに落ち着く時間なんかくれないんだと、やっぱりドSなんだと、思った。